1月25日答申平成24年度介護報酬改定の概要

1.全体改定率プラス1.2%中重度者重視へ

同時改定年度における介護報酬改定の基本的考え方

厚生労働大臣は2012年1月25日、平成24年度介護報酬改定について内容を承認のうえ答申を行い、本年4月施行となる介護報酬改定の具体的内容が明らかとなりました。
平成24 年度介護報酬については、次のような基本的考え方により、各報酬等が定められています。

(1)平成24 年度介護報酬改定率決定の経緯

厚生労働省・社会保障審議会における介護給付費分科会が提示した基本的な考え方として、平成24 年度介護報酬改定については、平成23年6月に成立した「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」の施行に伴う新たな介護サービス等への対応、診療報酬との同時改定に伴う医療と介護の機能分化・連携の強化などへの対応が求められるとしています。
また、現在検討が続けられている「社会保障・税一体改革成案」の確実に実施に向けた第一歩と位置付け、「2025年(平成37年)のあるべき医療・介護の姿」を念頭に置いたものであることが必要と明示しました。
こうした状況や介護職員の処遇改善の確保、物価の下落傾向など経済状況への配慮、および介護事業者の経営状況、地域包括ケアの推進など、今後の社会保障政策の方向性を踏まえて、今回の改定率1.2%(全体)が決定されたものです。

平成24年度介護報酬改定率と基本的な視点

各サービスの報酬・基準見直しの主な内容

基本的な視点に示されたように、今次介護報酬改定において、介護職員の処遇改善等に関する見直しは、主要な内容として新たな加算設置などに反映されました。
具体的には、(1)介護職員処遇改善加算の創設、(2)地域区分の見直し、という2点の改定が行われます。
その他、サービス別には主に次のような見直し等が決定しました。

居宅介護支援

2.居宅系 ~キーワードは自立支援と連携

介護職員処遇改善交付金から介護報酬への移行

介護を支える人材の処遇改善を目的として実施されていた介護職員処遇改善交付金に代わり、その相当分を介護報酬により評価することとなります。
この新たな体系に移行するため、今次改定での円滑な移行を図るべく、例外的かつ経過的取扱として、次期介護報酬改定(平成27年3月31日)までの期間は介護職員処遇改善加算が創設されます。
算定要件については、同交付金の交付要件と同様の考え方で設定されています。
尚、平成27年4月1日以降については、各サービスの基本サービス費において適切に評価されることとなっています。

<新規>介護職員処遇改善加算の内容

地域区分等の見直し

従来の地域割りの区分については、国家公務員の地域手当に準じて7区分に変更となるほか、適用地域と上乗せ割合について見直しが行われます。
また、適用地域について、国の官署が所在しない地域等においては、診療報酬における地域加算の対象地域の設定の考え方を踏襲する形で見直しとなります。
さらに、介護事業経営実態調査結果等を踏まえ、サービスごとの人件費割合についても改定されます。
これらは、報酬単価の大幅な変更を緩和する観点から、平成26年度末(平成27年3月31日)までの経過措置等が設定されています。

地域区分ごとの上乗せ割合の改定

居宅介護支援をめぐる改定

(1)自立支援型のケアマネジメントの推進

居宅介護支援において、サービス担当者会議やモニタリングの適切な実施を推進するため、運営基準減算について評価の見直しが行われます。

自立支援型のケアマネジメントの推進

(2)特定事業所加算

質の高いケアマネジメントを推進する観点から、特定事業所加算(Ⅱ)の算定要件を見直すこととしています。

特定事業所加算

(3)医療等との連携強化

医療との連携を強化する観点から、次のような算定要件及び評価等を見直し、併せて在宅患者緊急時等カンファレンスに介護支援専門員(ケアマネジャー)が参加した場合に評価を行うこととしています。

医療等との連携強化

(4)複合型サービス事業所の評価

利用者が複合型サービスの利用を開始する際に、当該利用者に係る必要な情報を複合型サービス事業所に提供し、居宅サービス計画の作成に協力した場合について、新たに評価することとなりました。

複合型サービス事業所の評価

3.認知症対応型共同生活介護

グループホームに関する厚生労働省の改定案のポイント

(1)新たな時間区分の設定と各加算等

身体介護の時間区分については、1日複数回の短時間訪問により中重度の在宅利用者の生活を総合的に支援する観点から、新たに20分未満の時間区分が創設されます。

新たな時間区分設定と評価

(2)訪問看護

短時間かつ頻回な訪問看護のニーズに対応したサービスの提供の強化という観点から、時間区分毎の報酬や基準の見直しが行われます。

訪問看護

(3)訪問リハビリテーション

訪問リハビリテーション

4.地域密着型 ~定期巡回・随時対応サービスの創設

通所系サービスの改正

(1)通所介護

通常規模型以上事業所の基本報酬については、看護業務と機能訓練業務の実態を踏まえて適正化が図られています。
また、小規模型事業所の基本報酬は、通常規模型事業所との管理的経費の実態を踏まえて適正化が行われます。
具体的には、サービス提供時間の実態を踏まえるとともに、家族介護者への支援(レスパイト)を促進する観点から、サービス提供の時間区分を見直すとともに、12時間までの延長加算を認め、長時間のサービス提供をより評価する仕組みとなりました。

通所介護

(2)通所リハビリテーション

通所リハビリテーションの機能を明確化し、医療保険からの円滑な移行を促進するため、短時間の個別リハビリテーションの実施について重点的に評価を行うとともに、長時間のリハビリテーションについて評価の適正化を図っています。

通所リハビリテーション

新たな評価 「地域密着型サービス」

今次介護報酬改定において注目される新設項目のひとつは、「定期巡回・随時対応サービス」です。
時間帯に関わらず、定期・随時対応を行うとともに、在宅療養中の利用者の日常生活に有用なサービスとして期待されています。

(1)定期巡回・随時対応サービス

日中・夜間を通じて1日複数回の定期訪問と随時の対応を介護・看護が一体的に又は密接に連携しながら提供するサービスであり、中重度者の在宅生活を可能にする上で重要な役割を担うものとして創設されました。

特定施設に関する厚労省の改定案のポイント

(2)複合型サービス

定期巡回・随時対応サービスとともに、小規模多機能型居宅介護と訪問看護の機能を有した複合型サービスが創設されます。
本サービスは、利用者の状態に応じた通い・泊まり・訪問(介護・看護)サービスを柔軟に提供する観点から、要介護度別・月単位の定額報酬を基本とした報酬を設定しました。
尚、利用者が医療保険の訪問看護を受ける場合の給付調整を行うものとしており、複合型サービスの利用者が医療保険の訪問看護を利用した場合には、所定単位数が減算される取扱です。

複合型サービス

■参考文献
厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会資料
「平成24年度介護報酬改定に関する審議報告(平成23年12月7日)」
同 平成24年1月25 日(第88回)資料
資料1-1「平成24年度介護報酬改定について(骨子)」
資料1-2「平成24 年度介護報酬改定の概要」

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