なぜ、この会社の成長はとまらないのか 自己覚知の経営…杉田圭三/杉田一真 著

「卓越したよい会社」とは、 (1)志が高い(2)倫理的に正しく豊かな企業理念を持っている(3)自社の存在意義を必死になって追求している
「卓越したよい会社」をつくるための経営手法として見えてきたもの――それが「自己覚知」です。
「自己覚知」とは、自分に気付き、自分を知るということ、つまり、「自(己)覚(知)」すること。
自覚とは、「自分自身の置かれている一定の状況を媒介として、そこでの自分の位置・能力・価値・義務・使命などを知ること」を意味します。

1.「自己覚知」した企業の共通項を探る

1)経営哲学を仕組み化して現場に落とし込んでいる

しまむらは、経営理念を「高い生産と適正な企業業績を維持する」とし、4Sを重視したローコスト・オペレーション・システムをM社員制度やマニュアルとリンクさせた改善提案制度などを駆使した仕組みを経営の現場に落とし込み、機能させています。
サイボクハムは畜魂碑を建立して、畜魂感謝祭を行い、「豚の命を大切にする」という経営哲学を店内に浸透させ、1頭まるまる活かし切る努力と、美味しいものを製造し、食べきってもらう努力をしています。

2)能力を誘発させる【場】をつくり機能させている

しまむらは「高速配転主義」の【場】を設定し、人材を育成しています。
仕事のポストをどんどん変え、スペシャリストをゼネラリストに育て、広い視野と知識を身につけさせ、常にチャレンジ精神を持ち続ける人材へと進化させています。

3)暗黙知を形式知に変換し、共有し、進化させている

しまむらは、最も優れたベテラン社員の仕事のやり方の暗黙知を形式知に変換した「マニュアル」とリンクした「改善提案制度」が、M社員の能力を最大限に発揮させている。
ハオコーは「感動と笑顔の祭典」「店長塾」で、パートナーさんの改善活動の取り組み、成功事例となる店長の店舗経営の暗黙知を形式知にし、共有を図っている。

4)個々人が払った努力を公正・公平に評価している

ハイデイ日高は「直営店舗方式の多店舗展開」により、社員の将来の夢が大きく膨らむと同時に努力して成果を出した者には、店舗経営者というポストが用意されており、払った努力が報われる。
個々人が払った努力の程度に応じて信賞必罰の人事考課が機能し、能力主義に基づく公正・公平に評価することを受容する好ましい組織風土が醸成される。

2.「自己覚知」がなぜ経営に必要なのか

京セラの稲盛和夫名誉会長は人生・仕事の結果に関する方程式を次のように示しています。
人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力  特に重要なのは「考え方」でマイナス100点からプラス100点まであります。
正しい「考え方」=意識・心を持つか持たないかで、人生・仕事の結果が大きく左右されます。
お客様に期待以上の満足(喜び)を与え、「絶対的に必要とされる存在」になるには、常に「徳」の精神に基づき、情理を尽くし、親身になってお客様の対応をし、尊敬を得ることが不可欠となる。
ヘンリー・フォードは、「成功に秘訣というものがあるとすれば、それは他人の立場を理解し、自分の立場と同時に、他人の立場から物事を見ることのできる能力である」と喝破しています。

3.「自己覚知」の経営に至るメカニズ

1)自己覚知」をうながす心について

人間の行動をコントロールするものは、人の心(意識)であり、それぞれの人の意識レベル、「自己覚知」の度合いが行動に比例し、人の能力を最大限に発揮させることになります。
経営資源は、人・物・金・情報などと認識されえています。それらは、互いに影響を及ぼしあっていますが、人がその行為を通して他の人・物・金・情報などのすべての経営資源をコントロールし、最大限に活かす源になっている。

2)「自己覚知」に至るまでのメカニズム

心は誰にも見えないけれど、心遣いは見える。それは、人に対する積極的な行為だから。
同じように、胸の中の思いは見えないけれど、思いやりは誰にでも見える。それも人に対する積極的な行為だから。人間の「心」の中身である「思い」を、「行い」というカタチで「見える化」しなければ、「結果」に結びつけることはできない。
カタチにできるかできないか、行動に移せるか移せないかの差は「思い」、つまり「気持ち」の強さによる。

4.「自己覚知」するための5つの要素

企業が「自己覚知」する5つの要素

1)「第1要素」経営哲学を再構築する

「この会社は何のために存在しているのか」「この経営をどういう目的で、どのようなやり方で行っていくのか」という基本の考え方を明確にし、経営者自身が自社の存在理由を鮮明にし、明文化し、経営判断の根本がぶれないようにする必要がある。
さらに企業経営は、「すべての人々の幸福の実現を図るために行う」という根本認識のもとに、全社員とその家族、取引先とその家族が幸せになれるように行うのです。

2)「第2要素」組織を再設計する

社員が2人以上いれば組織が必要となります。組織の設計が悪ければ、社員の能力を引き出せなくなったり、経営効率が低価したりする。
組織設計の段階で一人ひとりの役割・権限・責任を明確にし、権限委譲することによって、それぞれの能力を引き出さなければならない。
最適なビジネスユニットを構築すれば、責任逃れのできない自己責任経営体制が構築されるので、経営実態を把握して主体的に経営課題の解決に取り組む当事者意識を持った人材を育成することができる。

3)「第3要素」意味ある【場】をつくる

結果を出すためには、経営理念を事業の現場に落とし込み、物事が他との関連のなかに価値や重要さを持つことを深く考えさせる【場】をつくることです。
人を自己覚知させるには、仕事環境である【場】が重要な役割を果たしているからです。
人は次の3つにやりがい、働きがいを感じている
(1)創造性のある仕事ができる【場】環境がある
(2) 仕事の結果がフィードバックされる【場】環境がる
(3)仕事を通じて成長できる【場】環境がある。
【場】は、全社員の経営に関する考え方(意識)を変革する機会をつくります。
では意味ある【場】はどうつくればいいのか。
【場】にはハードとソフトがあります。
例えば会議の場合、会議室はハードで会、議室で行われる○○会議そのものはソフトです。
・経営目的を実現する全社員参加の経営の場
・経営活動を最適に執行する経営計画立案・発表の場
・経営活動の成果を評価する計画
・実績検討会の場 ・経営活動の最適執行実践度評価の場
・経営活動の実効性を高める数多くの場
上記3つの条件を最適に執行する「第4要素」最適な執行方法をシステム化と「第5要素」好ましい組織風土を確立することで、決められたことが決められたように執行できるシステムが重要になる。

なぜ、この会社の成長はとまらないのか 自己覚知の経営…杉田圭三/杉田一真 著本書は、私の同業でもある埼玉の税理士の方が執筆されました。
私自身、成長しているお客様と停滞気味のお客様の違いは何なのか?何が原因なのか?絶えず、観察してきました。
幾つかのポイントが見えてきたタイミングで本書と出会い、是非とも経営者の方々に本の要点だけでも伝えたいと思って紹介しました。
紙面の都合で、ベンチマーク企業の紹介は省略し、要点の箇条書きとなっております。
興味ある方は、弊所のHPでもう少し詳細のエッセンスをご覧頂きたいと思います。
可能ならば、是非とも購読して頂きたいと思います。

お勧め度:★★★★★ 星5つ
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(桐元 久佳)