社員のモチベーションは上げるな!…宋文洲 著

やる気があるかどうかは、どうでもいいことです。
やる人だけが報われるのが世界の真実であり、やる気のない人を、いくらめんどうをみてやったところで、やる気が出たためしがありません。
やる気があっても、なくても、同じようにチャンスを与え、成果を上げた人をきちんと評価する。
渇きこそ、モチベーションの源泉です。
他人に与えられるのではなく、自分で感じ取るものです。

部下のモチベーションは、上司が上げるものではなく、お客さんとの関係の中で、本人の心に自然と芽生えてくるものなのです。
本当は現実的な戦略を考えて、実行しなくてはいけないのに、心に余裕がなくなると、「とにかく、がんばろう」になってしまう。
不安なときこそ、ありのままの現実を、直視する勇気が必要です。
目の前の困難を受け止めて、対応策を考える。
一つずつ問題を解決していくしか、道は拓けない。

成長する会社は、社員が自分で考え、行動します。
失敗したら、どこがダメだったのかを反省し、それを教訓にして次のステップに進んでいきます。
めざすべきは、「楽しい職場」ではなく、「仕事を通じて、楽しいと感じること」です。
お客さんに喜んでもらうことが社員の喜びとなり、それがモチベーションになっていくからです。

やる気のなさそうな社員がいても、グッと我慢するこ とです。
そして理由を考えてみるのです。
人間は生きている以上、「何かをしたい、成し遂げたい」という欲望を持っています。
企業の目的と社員の欲望が一致するとは限りませんが、同じ目的でなくとも、同じ方向に社員の目を向けることは可能だと思います。

「やる気はなくても、給料をもらっている以上、その分は働く」そういう社員が増えれば、会社はそこそこの業績を上げることができます。
それが最低限のモラルです。

もし、部下がミスをしたなら、自分はきちんと教えるべきことを伝えていただろうか、と反省するべきです。
部下には、「これを教訓にして、次の仕事に生かしなさい」と一言、伝えるだけで十分です。
きつく叱るよりも、その言葉が部下の心に刻みつけられ、「次はミスをしないで、がんばろう」という気になります。
それが モチベーションの種になるかもしれません。

部下を叱るときの三つの鉄則とは
(1)会社の規定やモラルに反するときだけ叱る
(2)ミスをした事実だけを指摘する
(3)社員の人格を攻撃しない
「ホウレンソウ」の徹底が、責任転嫁を生みます。
「とりあえず報告しておけばいい」という、責任逃れ的な空気が生まれてしまうことです。
管理するのは人ではなく、仕事の中身です。
仕事を マネジメントするのが上司の役目です。
では、上司は 仕事をどうマネジメントするのか?
それは部下の能力や性格を見極めて、適材適所に配置すること、つまり、チームワークをよくして、仕事の効率を上げるということです。

上司が部下に遠慮なく意見をいえることが大切なのです。
部下の意見をくみ取りながらも、考えの甘いところをきちんと指摘できる。
仕事上の意見がぶつかっても、個人的な感情にしこりを残さない。
それが、結果的に部下を育てることになります。

危機感のない会社は、弱体化するということです。
人間の能力には、ほとんど差がないと思っています。
その差が広がるのは、緊張感を持った人間が一生懸命、能力を磨く努力をするからです。
能力は磨けば磨くほど、光輝きます。
直観力も磨かれます。
そういう人 が経営者になれば、会社は大きくなって当然です。
緊張感があるから強くなれるのです。

上司は、部下の仕事の結果だけをみるのではなく、プロセスを見なければならない。
どこに問題があるのかを指摘し、それを改善するように指示しなければなりません。
本当の成果主義とは、そういった仕事のプ ロセスを評価すること。
そのために、上司が目標を達成するためのプロセスを設計し、そのプロセスを細分化し、個々の段階でそれぞれの担当者がやるべき仕事を具体的に提示します。
そして、その具体的な仕事を確実にやることが、「成果」なのだとはっきり伝えればいいのです。
そうすれば、社員のモチベーションは上がるはずです。

勝ち残る企業の社員と、負けていく企業の社員に差はないのです。
人は失敗から多くを学びます。
いろいろな経験をしている人は、直感が働くようになります。
だからこそ、若いうちに失敗を経験して先を読む力を養う必要があるのです。
一朝一夕で身につくものではありません。

人間というのは楽をすると怠け者になります。
人間には楽な方へ流れる心の弱さがあるのだと自覚し、物事がうまくいっているときでも、常に努力を怠らないようにすべきです。

人間も現状に満足していれば、やる気がなくて当然です。
それが生物の本能というものでしょう。
文句があるなら、その不満を原動力にして、努力すればいいだけのことです。
要するに自分の気持ち次第なのです。

人間はやはり、希望がないと、生きる気力が生まれてきません。
いまの日本は「平等」という名の悪平等が広がっています。
平等を前面に出しすぎると、基本的な社会の活力を失ってしまいます。
努力の方向が違えば、報われないことはあります。

いくら努力しても、どうにもならないこともあります。
長い間の努力が、一瞬のうちに消えてしまうこともあります。
「努力は報われることもあれば、報われないときもある」この現実を受け入れることのできる人こそ、 最終的な努力が報われるのだと思います。
“つもり” の努力で報われるほど、人生は甘くありません。
本当に努力している人は、きちん成果を上げています。
成果を上げられないなら、それは間違った努力といえる でしょう。
すぐに方向転換すべきです。

人間としての「格」に差はありませんが、能力には差があります。
それは素直に受け入れるべきです。

安心できる状態は、人間をダメにします。
何もしなくなり、何も考えなくなります。
人間は生まれてきたときから、死に向かって生きています。
死と闘いながら、 いきていくわけです。
緊張感がなくなったら、生きる気力がなくなってしまいます。
人間には適度な緊張感が 必要なのです。
安心は、自分の心が作るものです。
他人に作ってもらうものではありません。
それなら、不 安をパワーにして生きる方がよほどましです。
もともと不安をバネに生きるのが人間なのです。
不安をマイナスにとらえるのではなく、プラスにすること。
それが、 私たちにいま、求められていることなのです。

水は高いことろから低いところへと流れます。
高低差があるから流れるのです。
差があることは、決して 悪いことではありません。
自然界の摂理なのです。

苦労には2種類あります。
一つがチャレンジすることで生まれる苦労、もう一つが意味のない苦労です。
意味のない苦労とは、現状を維持するためだけの苦労のことです。
チャレンジするからこそ、苦労のしがいがあるのです。
現状維持のためにする苦労は、ただつらいだけです。
何も得るものがありません。
チャレンジ することで生まれる苦労は、人生の糧になります。
たとえ失敗したとしても、次のチャンスに生かすことができます。
どうせ苦労をするのなら、意味のある苦労をした方がいいと思います。

社員のモチベーションは上げるな!…宋文洲 著ソフトブレーン株式会社の創業者である宋文洲氏の著書は、数冊読んでいるのですが、今回の「社員のモチベー ションは上げるな!」も素晴らしいと思ったので選びました。
社会の現実を直視しする精神的な強さ。
世の中の矛盾を指摘する洞察力。
とても参考になります。

お勧め対象者:経営者、幹部の方。
お勧め度:★★★★☆ 星4つ
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(桐元 久佳)